ギャロップレーサー事件(最高裁平成16年2月13日第二小法廷判決)

本件は、競走馬の名称についてパブリシティ権が認められるかについて判断がされたものです。
最高裁は競走馬の名称についてはパブリシティ権は認められないと判断しました。

「ギャロップレーサー」(以下、「本件ゲームソフト」という。)というのはプレーヤーが騎手となり登録されている競走馬の中から選択した馬に騎乗してレースを展開するというゲームです。

Y(被告・控訴人=附帯被控訴人・上告人=被上告人)は、競走馬の所有者であるX1~X19ら(原告・被控訴人=附帯控訴人・被上告人(X15~X19を除く)=上告人)に承諾得ることなく競走馬の名称を使用して、本件ゲームソフトを製作・販売しました。Xらは、Yの行為はXらの物のパブリシティ権の侵害行為にあたるとして本件ゲームソフトの製作・販売等の差止めと不法行為による損害賠償を請求しました。

最高裁判決のポイントは以下の通りです。

ポイント1:
「競走馬等の物の所有権は,その物の有体物としての面に対する排他的支配権能であるにとどまり,その物の名称等の無体物としての面を直接排他的に支配する権能に及ぶものではないから,第三者が,競走馬の有体物としての面に対する所有者の排他的支配権能を侵すことなく,競走馬の名称等が有する顧客吸引力などの競走馬の無体物としての面における経済的価値を利用したとしても,その利用行為は,競走馬の所有権を侵害するものではないと解すべきである(最高裁昭和58年(オ)第171号同59年1月20日第二小法廷判決・民集38巻1号1頁参照)。」

ポイント2:
「現行法上,物の名称の使用など,物の無体物としての面の利用に関しては,商標法,著作権法,不正競争防止法等の知的財産権関係の各法律が,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に排他的な使用権を付与し,その権利の保護を図っているが,その反面として,その使用権の付与が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約することのないようにするため,各法律は,それぞれの知的財産権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,その排他的な使用権の及ぶ範囲,限界を明確にしている。上記各法律の趣旨,目的にかんがみると,競走馬の名称等が顧客吸引力を有するとしても,物の無体物としての面の利用の一態様である競走馬の名称等の使用につき,法令等の根拠もなく競走馬の所有者に対し排他的な使用権等を認めることは相当ではなく,また,競走馬の名称等の無断利用行為に関する不法行為の成否については,違法とされる行為の範囲,態様等が法令等により明確になっているとはいえない現時点において,これを肯定することはできないものというべきである。したがって,本件において,差止め又は不法行為の成立を肯定することはできない。」

ポイント3:
「競走馬の名称等の使用料の支払を内容とする契約が締結された実例があるとしても,それらの契約締結は,紛争をあらかじめ回避して円滑に事業を遂行するためなど,様々な目的で行われることがあり得るのであり,上記のような契約締結の実例があることを理由として,競走馬の所有者が競走馬の名称等が有する経済的価値を独占的に利用することができることを承認する社会的慣習又は慣習法が存在するとまでいうことはできない。」

まずポイント1では、顔真卿事件の判旨を引用し、有体物に対する権利である所有権と無体物の財産権は全く別物である旨を判事しています。

ポイント2では、排他性がある権利が認められるためには実定法上の根拠が必要というのが大原則ですので、競走馬の所有者に競走馬の名称の独占排他権を認めることは妥当でないと判断しました。

ポイント3では、競走馬の名称等の使用料が支払われている実例があることを主張した原告に対し、慣習法等があるとまでは言えないとしています。

パブリシティ権については明文規定がある訳ではないため、パブリシティ権が認められる根拠として、人格権を根拠にする説(人格権説)と人格権とは全く別個の純粋な財産権であるとする説(財産権説)とがありますが、本判決がでて以降は、人格権説が主説になりつつあり、物のパブリシティ権は否定される傾向にあります。

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